栃木県/大口 尚孝 様

《審査員からのコメント》

大口さんが取り組んでいるのは、雨水利用とソーラー発電で始める「アクアポニックス」(魚などの養殖と野菜の水耕栽培を組み合わせたシステム)。“天からの贈り物”である雨水と太陽光のやさしさを掛け合わせて、メダカ・金魚と野菜を同時に、なおかつ持続的に育てる試み。このユニークなチャレンジに、雨水の新たな活用法が見えてきました。

雨水とソーラーエネルギーの「アクアポニックス」

雨水とソーラーエネルギーで稼働している「アクアポニックス」。画像1
雨水とソーラーエネルギーで
稼働している「アクアポニックス」

父親が他界し、実家にUターンした。実家は築42年、車が10台は駐車できるくらいの庭付き古民家。庭は手入れがされていない状態で、雑草が生い茂り荒廃している。すぐ横には川が流れ、山まで200メートルと離れていない環境。俗にいう「田舎」である。新たな生活の地で、まず始めに荒廃した庭の手入れからすることにした。

手入れが終わり、この広い庭をどう活用したら良いのか?今まで都会でマンション暮らしの私には難しい課題であった。そこで「家庭菜園」をキーワードにネットで色々調べ進めていくと「レイズドベッド」、「オーガニック」、「雨水利用」、「ソーラー発電」、「アクアポニックス」というどれも興味深い項目が出てきた。
もともと熱帯魚を飼育していたので「雨水とソーラー発電を利用したアクアポニックス」を庭ですることにした。「アクアポニックス」は水を常に循環させるため大量の水が必要になる。コストを下げるために、雨水を自作のタンクに溜めて循環させ、ろ過しながら使用することにした。溜めた雨水は主に「家庭菜園」と「アクアポニックス」に使っている。

雨水のタンクは一番下。水はポンプで一番上に送っている。画像2
雨水のタンクは一番下。
水はポンプで一番上に送っている。

日本には「水道」という便利なものがある。蛇口から「美味しい水道水」を簡単に飲むことができる。しかも「電気」「ガス」と比べると、高い料金を払っているわけでもない。雨水を水道水の代わりに利用するのではなく、「水道水では使えないところ」を補ってもらう。そんな雨水の使い方をしている。今は「アクアポニックス」と「家庭菜園」だけだが、「お風呂」や「洗濯」にも雨水が使えるようにしたいと思っている。ろ過の技術の進歩で飲料水にできるのであればそれもいいと思う。災害時に安心のためというよりは、常日頃から「雨水」を使えるようにしたい。

上段と中段の「水耕栽培」の様子。画像3
上段と中段の「水耕栽培」の様子

水は蒸発する。雨はいつ降るかわからない。安定した雨水を確保するためには、かなり多くの雨水を溜水する必要がある。雨水自体は「ただ」で良いのだけれど、溜水するためのタンクや装置にコストがかかりすぎる。それとタンクを設置する場所もそれなりに必要になる。ろ過して循環させることにも限界がある。

必要な時に「雨」が降ってくれればと思うことが多くなった。それは無理だとわかっていても。あとは「イメージ」である。都会に住んでいると「雨」にはあまり良いイメージを持つことができない。ただ鬱陶しいだけの存在である。しかし、田舎にきてそのイメージが変わってきた。やはり自然の風景と合うのだと思う。草や木が濡れたほうが、コンクリートが濡れているより綺麗に見えるからだろうか?雨を観察するようになった。

メダカと金魚を飼育。外敵から守るために蓋がある。画像4
メダカと金魚を飼育。
外敵から守るために蓋がある。

雨水を使うようになってから「空」を見ることが日課になった。天気のことが気になるから、天気予報をジックリとみる。今までは「傘を持って出かけるか?」としか考えずに見ていたのに。「天からの贈り物」という言葉をよく聞くが、雨水はまさに生きていくために必要な贈り物であることを実感している。

今まで何も考えずに使っていた「水」。大切な資源であることをこの歳で実感した。まだまだ利用したい「天からの贈り物」が沢山ある。これからそれらも利用しながら生活したいと思っている。