栃木県/大口 尚孝 様

《審査員からのコメント》

トイレの流し水に雨水を利用するシステムを、趣味の電子工作やDIYの技術で実用化した湯川さん。水位センサとコントローラの組み合わせで雨水と水道水の巧みな使い分けも自動制御。必要となる電力を自然エネルギー(小型太陽光発電)でまかない、世の中への普及を目指して製作本を自費出版された熱意にも脱帽です。これぞDIY事例のNo.1!

トイレ雨水利用システム

水がないと人は三日と生きられません。日本は世界の平均降水量の2倍近い雨が降り、とても雨に恵まれた国ですが、そんな水を無駄にしていないだろうか?雨水は自然がくれた贈り物、これを活用する方法はないだろうか?と思い立ちました。

暮らしの中で、雨水は、殺菌処理して上水(飲める水)として利用しています。下水を上水にするには多くの処理が必要ですが、雨水は比較的綺麗ですので、上水化が容易です。

特に、降雨時の初期雨水は、ゴミや大気中の不純物が多く含まれていますが、降り始めからしばらく経った後の雨水は非常に綺麗です。そのため、初期雨水を区別することで、より綺麗な雨水を取り出すことが出来ます。そうすることにより有効かつ広範囲に雨水を利用できます。軽度な処理で済ませて、洗濯用や風呂水用に利用できますが、においの除去に課題があります。この他、雨水を溜めておけば、非常時の初期消火用に利用できますし、煮沸や濾過をすることで、緊急用の飲料水にもなります。夏場に屋根や道路に散水して、高温化抑制等のヒートアイランド対策として利用することもできます。地中への浸透水を利用することで濾過され飲水として利用可能となり、昔ながらの井戸の役目を果たせます。雨水タンクは街の中の小さなダムであり、家庭の小さなダムでも、集まれば巨大なダムに匹敵します。

現状家庭での雨水活用の多くは、散水用・栽培用水程度にしか利用されていません。家庭において上水は主に、トイレの洗浄用・お風呂・炊事洗濯に使われています。約3分の1をトイレ洗浄で捨てています。これは環境にとって無駄なことをしていると思います。上水を作るには化学処理や殺菌のため、多くの薬品や電力が使われています。せめて何日かだけでもトイレ洗浄での浄水利用を控えることが出来れば、環境保護対策になると思い、トイレに雨水を利用するシステムの製作を思い立ちました。

全体構成図/実用中のトイレ画像1
全体構成図/実用中のトイレ
雨水利用システムの構成図

まずは、趣味の電子工作やDIYの技術を用いて、出来るだけ自動化したシステムを作り始めました。最初はいろいろ問題が発生しましたが、その都度改良を加え、実用的なシステムが出来上がりました。家庭で使用するには、メンテナンスや故障が少ないシステムにすることが大切です。特にシステムに使う部品も、耐久性に課題がありましたが、改良を重ね、今では半年に一度のゴミ取りフィルタの掃除程度ですむようになりました。システムに使う電力も小型太陽光発電で作りますので、完全な自然エネルギーだけを使ったシステムにできました。

雨水だけでトイレ洗浄をまかなうには、大きなタンクが必要になります。最低でも1,000リットルは必要であり、各家の駐車場の地下に貯水タンクを設置する方法がありますが、個人では製作が困難ですので、タンクは家の軒先における300リットルから500リットルにしています。雨が降らないときは、風呂の残り湯をタンクに注水できる機能も追加しました。これにより我が家では、トイレ洗浄は、少量の手洗い水以外、上水を使いません。

トイレタンクとコントローラの写真画像2 トイレタンクとコントローラの写真
トイレタンク内に水位センサを内蔵して、トイレを流してトイレタンク内の水位が低下すると、ポンプを起動してトイレタンク内に雨水を注入します。貯水タンクに水がない場合、上水給水菅のバルブを全開にして上水を注水します。普段は手洗い水用にバルブは少しだけ開けておきます。ポンプの動作や各種制御は、小型マイコンを用いたコントローラで制御します。

画像3 貯水タンクの写真
貯水タンク内に水位センサを内蔵して、貯水タンクに水があればポンプを起動します。雨どいから取水した雨水にはゴミが混ざっていますのでゴミ取りフィルタで除去します。貯水タンクが満杯になればオーバーフロー排水菅から排出します。
貯水タンクの写真

取水トユの写真画像4 取水トユの写真
雨どいから雨水を取水する取水部分で、豪雨のときなどは、開閉弁を開いて雨戸どいに雨水を逃がします。

トイレに雨水を利用すると、①環境保護に貢献できます。②家計での出費が節約できます。③エコ生活を実感できます。一部の施設だけでなく、家庭で活用することで雨水利用を拡大できます。家庭用に製作するには費用も重要ですが、現状運用しているシステムは3万円程度で製作でき、原価償却も容易です。

いろんな人が自分で作れるよう、製作本を出版しました。最新版は“完全エコ雨水利用システムの製作”といいます。みんなが雨水利用に興味をもち、環境保護に興味をもてるように、雨水利用を推進したいと思います。